縦の糸はホラー 横の糸はゾンビ 織り成す布はいつか誰かを暖めうるかもしれない

ホラー映画のあらすじからネタバレまで映画総合情報メディア

【映画レビュー】ブラッディ・リベンジのあらすじ・ネタバレ解説【被害者を見てほしい】

「ブラッディリベ...」の画像検索結果 

 ブラッディ・リベンジのあらすじー前半

ノエルは大学の美術学研究科に通う普通の大学生。

彼女の作品は平凡そのもので、先生からも同じクラスの生徒からもつまらない作品だと言われて悩んでいる。

彼女はある同じクラスのルークに少し憧れている。

ある日彼から自分の部屋で開かれるパーティに誘われる。

前から彼に憧れていた彼女は、おしゃれをして彼のパーティに出かける。

彼といい関係で部屋で美術の話をしていると突然彼が豹変、嫌がる彼女に彼は強引に性行為を行い、レイプされる。

成すすべなく泣き崩れる彼女に誰も声をかけてくれなかった。

一人ベッドで泣いているとルームメイトのスカイ(本名はデイジー)が話しかけてくれる。

彼女は同じような境遇の友人が同じようにレイプにあってしまい、それを学校に相談したら瞬く間に広まり、彼女自身が逆に遊び人としてレッテルを張られてしまった話をし、決して誰にも口外しないようにアドバイスをする。

 その後、大学に通う彼女だが、同じクラスということもあり、授業中のノエルが気になる。

彼が別の女の子に話しかけるたびにいてもたってもいられなく、授業を早退。たまらず大学に相談することにした。

大学の学内カウンセラーははじめは親身に話を聞いてくれたが、レイプキットが意味がないこと、目撃者がいないか、レイプを証明できるか、イヤだと彼にわかるようにちゃんと伝えたか、お酒は飲んでいたか、など彼女を疑うような質問をしだす。

ノエルはそんな大学職員に絶句し、上の空になってしまい、大学を後にする。

すると、ルークから、自分の部屋にこないかというメールが届く。

 ノエルがルークの部屋に行くと麻薬でラリっているルークがいた。

彼はまた、肉体関係を望んだが、ノエルが謝罪を求めると逆上し、ノエルにすぐに出て行くように言う。

ノエルは頭に血が上り彼に再度謝罪を求めると、もみ合いになり、彼は階段から落ちてしまい、死んでしまう。

ノエルは慌てて逃げ出した。

警察が調べを進めていくが、最終的に他殺の証拠が見つからないことと、麻薬が見つかったことから不幸な事故と判断された。

ノエルはその後自分のようなレイプ被害者がいるのではと思い、ネットで調べるとリンジー・ショウという女性を見つける。

彼女はアメフト部の部員3名にレイプされて、ビデオも撮られていたが、顔が映ってないという理由で最終的に3人とも無罪になっていた。

 彼女はリンジーに近づき当時の話を聞いた。いまだに彼女をレイプしたアメフト部員は反省もせずにパーティを開き続けているという。

また、ノエルはVデー・バルモアという社内誌製作部に赴く。彼女らは女性がパーティでレイプされる女性のことを取材しようとするものの、その内容は本気とは言えないお遊びのようなものだった。 

ブラッディ・リベンジのあらすじー後半

 ノエルは自分でリベンジするしかないことに気づくのだった。

次の日からノエルは派手なメイク派手な格好でアメフト部の3名のレイプ犯人を誘惑しておびき出しては殺していく。

彼女は殺すたびに絵を描いていった。

それは先生や同期のの学生に高く評価され、まるで官能的で、才能あふれる作品として評価された。

事件はバルボアの悲劇として報道され、警察はもはや事故ではなく殺人として捜査した。

そのころノエルは同じ大学のアジア系の大学生シェーンと恋に落ちるが、どうしても性行為が怖くてできなかった。

また、同時期ルームメイトのスカイも同じような傷を抱えていることを知る。

彼女はバスケット部のレギュラー選手であるカルヴィン・リーブスのレイプ事件をきっかけにデイジーという本名を捨てていた。

しかも自分と同じように学内カウンセラーのメリッダによって人格障害の疑いや相手を誘った疑いと理由付けてレイプ事件をもみ消していた。

ノエルはカルヴィンを襲い、スタンガンで気絶させ拉致する。

その後体育館まで来て、拷問しようとするが警察の邪魔が入ってしまい、殺し損ねてしまった。

スカイは血だらけの彼女を見てびっくりする。

スカイは部屋で血だらけのノエルの下着を見つけ、しかも自分の過去の暴行された写真を見つけてノエルを問い詰める。スカイは復讐よりも事件が忘れ去られることを望んでいた。

ノエルはスカイに迷惑がかからないように警察に自首することを決意。

しかし、翌日スカイは手首を切って自殺してしまう。

その後ノエルは大学を卒業するが、意識の回復したカルヴィンの供述で逮捕され、そのまま警察に連行される。

  ブラッディ・リベンジのキャストと評価

  【キャスト】
フランチェスカ・イーストウッド
クリフトン・コリンズ・Jr
リア・マッケンドリック
ピーター・バック

【スタッフ】
監督:ナタリア・レイテ
製作:マイク・C・マニング、シンタロウ・シモサワ

 評価:75/100点

リベンジ映画としては全うなつくりの作品。主人公は単なる殺人鬼ではなく、感情も持っている社会的弱者。

B級映画としては思わぬそこそこ拾い物。

ブラッディ・リベンジのネタバレ解説

クリントイーストウッドの娘が主役ということで少し話題を集めた作品。

アイ・スピット・オン・ユア・グレイブのようなB級映画のよくあるスプラッタバイオレンスリベンジものではなく、極めて全うな作品でした。

主人公はマジメで美術に傾倒している女子大生。でもある日恋した男性に乱暴されたことで自分と社会の中に眠る黒いものに気づいたのでした。

彼女が多くの殺人で伝えたかったこと

 彼女がレイプされたことをきっかけに気づくことがあります。

一つはあまりにもレイプされる女性が多いこと。

もう一つはレイプした男は往々にして大学側が事件をもみ消し、本人たちは謹慎などの軽い罰でその後はのうのうと生きているということ。

そして最後にレイプされた女性は多くが、その事実を公表できず胸の中にしまいこんでしまうことです。

実際にアメリカではそういうことが多いのかわかりません。

しかしどうもクリントイーストウッドの娘ということもあり、メッセージがビシビシと飛んでくるような感じがあります。

というのもこれは最後の彼女が大学の修了式でのスピーチです。これが本作の彼女が逮捕されるまでの花道で、結構かっこいいです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

芸術の意義は?

幼いころひまわりの花を水彩画で描きながら思っていました。

元気な花もいつかしおれて死んでしまうと

でも私にはそれを保つ力がある。美しいものを不死身にし、残酷な命の法則から守る。

ダヴィンチは言いました。

画家の出発点は一塗りの黒であるべきだ。

光が当たらない限り、万物は黒いからである。と

普通出発点は白いキャンバスです。

私たちが認めるべきは水は濁り 花びらは散るということ

芸術を通じ、自分の闇に向き合うことで人は変われるのです。

 同級生の皆さんどうか

美を保つより真実を明かしてください。

結果など省みず、周りを不快にさせても正直でいてください。世界のために自分のためにも。

 --------------------

 彼女はいつわりで彩られた現実世界にほとほと嫌気がさしていました。

レイプをもみ消そうとする大学、のうのうと生きているレイプ犯、レイプされた側をヤリマンとしてののしる周囲の人間、まるでチャリティーのようにレイプ被害者を守るふりをして悦に入る学生団体、レイプ犯を捕まえずレイプされた側を逮捕するのにやっきな警察、そしてレイプされた人が必死に過去を隠そうすること、などキレイなものをキレイでいさせ続けようとすることに人間や社会は必死です。

でもそんな美しさには無理がありますし、そんなものは絵に描いた花のように偽りの存在でしかありません。

彼女は女性がレイプされないように気をつける世の中ではなく、男性が性器をしっかりコントロールする時代を望んでいます。

この世の中は真っ白なキャンバスではなく、黒からスタートするのです。そのままで美しいということはなく、真っ黒であることから一生懸命努力してはじめて少しづつきれいになれるのです。

そして彼女が気づいたものは自分の中にも確かに黒いものがあるということ。

男性が性器を押さえ切れないのと同じで、自分の中にも殺人をするという衝動が確かにあったのでした。

ノエルは殉教者

 ノエルは被害者でもあり、加害者でもあります。

彼女が多くの人間を殺したのはもちろん美術作品のためとか、自分の中の殺人衝動もあるのでしょうが、やはり弱者に寄り添わない社会に対しての殉教者だったのでしょう。

その身をもって社会にレイプ犯罪のいかに社会が向き合っていないかを知らしめるために彼女は命をささげたのでした。

彼女の唯一の誤算はスカイが自殺してしまったこと。

でもあれがあったからこそ、おとなしく警察に投降したのでしょう。

彼女にとってはじめて罪を償おうと思ったのは、彼らを殺してしまったことではなく、彼女を殺すことになってしまった罪なのでしょう。

スカイは被害者の代表格。あんなに派手そうで元気な女の子は実は闇を抱えています。目の前にある美しさは嘘かもしれない、それは作られた美かもしれない。最後のスピーチは紛れもなくスカイに向けられたものでしょう。

 

ブラッディリベンジの最後に

  主人公の演技は素晴らしかったと思う。

はじめの暴力されるシーンでの彼女の無力さとそのあとの誰も力になってくれないという絶望、そして社内新聞部を出た後の「俺がやるしかねー」という決意の目は非常に力強い印象を受けました。

単純なリベンジスプラッタで終わらずにしっかりと人間の黒い部分を直視しながら主人公の葛藤とメッセージがつまった作品でした。